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業界知識

畳の張替え・表替え費用相場|交換の種類と判断基準

吉野 博

株式会社LinK 代表 / 業界歴約11年 / 原状回復・リフォーム専門

退去した物件の畳を見て、「どこまで直すべきか、費用はいくらかかるか」と迷う管理会社の担当者は少なくありません。畳は「表替え」「裏返し」「新畳への交換」と選択肢が複数あり、状態に応じて適切な施工方法が変わります。見誤ると、必要以上に費用をかけてしまうか、逆に入居付けに影響が出るか、どちらかのリスクを抱えることになります。

結論から言うと、表替えは1畳あたり3,000〜8,000円、新畳への交換は1畳あたり15,000〜35,000円が関東一都三県の費用相場です。ただし、畳の状態・グレード・間取り・発注構造によって費用は大きく変わります。

この記事では、畳の施工方法ごとの費用目安、状態別の選択基準、経年劣化の考え方、費用を抑える方法まで、管理会社の担当者が実務で使える情報を整理します。

畳の施工方法は3種類。何が違うのか

畳の補修・交換は3つの施工方法に分かれます。どの方法を選ぶかで費用が2〜10倍変わるため、まず基本を押さえてください。

裏返し(うらがえし)

畳表(たたみおもて)を畳床(たたみとこ)から外して、裏面を表に付け直す施工です。費用は1畳あたり1,500〜4,000円が目安で、最もコストが低い方法です。

裏返しができるのは、使用年数が3〜5年以内で、表面の色褪せや傷みが軽度な場合に限られます。裏面には日光が当たっていないため、表面と比べて色の鮮度が残っています。ただし、一度も裏返しをしていない畳にしか適用できません(裏面が既に使用済みの場合は不可)。

関東では、和室付きの物件で入居が短期(2〜3年以内)だった場合、裏返しを検討する価値があります。コストは表替えの半額以下に抑えられますが、状態確認を現場で行ってから判断することが重要です。

表替え(おもてがえ)

既存の畳床はそのままに、畳表(イ草のゴザの部分)と畳縁(たたみべり)を新品に交換する施工です。費用は1畳あたり3,000〜8,000円(グレードにより異なる)が相場です。

使用年数5〜10年で、畳床(中の芯材)に問題がなく、畳表の傷みが目立つ場合に適しています。新品のイ草に交換するため、見た目の鮮度は新畳とほぼ変わりません。畳独特の青みがかった色と香りが戻るため、内見時の印象改善に直接効きます。

賃貸の原状回復で最もよく使われる施工方法です。費用対効果が高く、畳床が健全であれば新畳に交換するより大幅にコストを抑えられます。

新畳への交換(新調)

畳床ごと新品に交換する施工です。費用は1畳あたり15,000〜35,000円が目安で、3つの方法の中で最もコストがかかります。

畳床が劣化している(へたり・カビ・虫食い・水濡れ)、既に複数回表替えをして畳床がぼろぼろ、あるいは物件の床面に段差が生じている場合に必要になります。また、フローリングから和室に改修するときや、リノベーションで部屋の雰囲気を一新したい場合にも新調を選びます。

畳の費用相場を間取り別で見るといくらか

間取り別費用テーブル(表替えの場合)

関東一都三県における表替えの費用目安です。国産イ草・中級グレードの畳表を使用した場合の相場を示しています。

間取り 和室の畳数目安 表替え費用目安
1K・1R 4.5〜6畳 14,000〜48,000円
1DK 6畳 18,000〜48,000円
1LDK 6〜8畳 18,000〜64,000円
2DK 6〜10畳 18,000〜80,000円
2LDK 8〜12畳 24,000〜96,000円
3LDK 12〜16畳 36,000〜128,000円

間取り別費用テーブル(新畳交換の場合)

間取り 和室の畳数目安 新畳交換費用目安
1K・1R 4.5〜6畳 68,000〜210,000円
1DK 6畳 90,000〜210,000円
1LDK 6〜8畳 90,000〜280,000円
2DK 6〜10畳 90,000〜350,000円
2LDK 8〜12畳 120,000〜420,000円
3LDK 12〜16畳 180,000〜560,000円

費用に含まれるもの・別途発生するもの

上記費用には、材料費(畳表・畳縁・畳床)と施工費が含まれています。一方、以下は別途発生する場合があります。

  • 畳床の補修費用:カビ処理・虫害処理が必要な場合(1畳あたり2,000〜5,000円)
  • 下地補修費用:床板が腐食・傷んでいる場合(状況による)
  • 廃材処分費:旧畳の処分(1畳あたり1,000〜2,000円)

原状回復全般の費用相場でも解説していますが、「一式」とだけ書かれた見積もりは何が含まれていて何が別途なのかが不明瞭です。確認を怠ると後から追加請求が発生するリスクがあります。

畳の状態別・施工方法の選び方はどう判断するか

状態確認のチェックポイント5つ

退去後の現地確認で、以下の5点を確認します。これが施工方法の選択判断に直結します。

  1. 色褪せの程度:青みが完全に失われているか、茶色に変色しているか。茶色への変色が全体の5割以上なら表替えが必要
  2. 破れ・傷の有無:畳表のイ草が切れている、ほつれている、穴が開いているケースは表替え以上が必要
  3. へたりの程度:畳の中央部を踏んで、スポンジを踏んでいるような感覚がある場合は畳床の劣化が疑われる
  4. カビ・臭い:畳表をめくって確認。カビが畳床に及んでいる場合は新調が必要
  5. 浸水・水濡れ跡:畳表の波打ちや変色は水濡れのサイン。畳床まで傷んでいることが多い

施工方法の選択フロー

  • 裏返しが適切な場合:使用年数3〜5年以内、表面の傷みが軽度、一度も裏返しをしていない
  • 表替えが適切な場合:使用年数5〜10年、表面の色褪せ・傷みが目立つが畳床は健全
  • 新畳への交換が必要な場合:畳床のへたり・カビ・水濡れが確認できる、使用年数10年以上、複数回表替え済み

迷った場合は「畳床を触って確認する」が一番確実です。畳の角を持ち上げて畳床の硬さとカビを確認します。床面が柔らかくなっていたり、カビの黒ずみがあれば新調を選んでください。

経年劣化で費用負担はどう変わるのか

畳の耐用年数と減価償却の考え方

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」では、畳について以下のように定めています。

畳表(たたみおもて)の耐用年数は6年。6年経過後の残存価値は1円と算定される。畳床(たたみとこ)は新畳交換の場合、消耗品として経過年数を考慮する。

つまり、居住年数6年以上の物件では、畳表の費用について借主負担はほぼゼロになります。表替えの費用は、ほぼ全額がオーナー負担になると考えてください。

一方、居住年数が短い場合(例:2年)は、残存価値の割合に応じて借主に費用請求できます。ただし、「通常の使用による経年劣化」か「借主の故意・過失による損傷」かで負担割合が変わります。

借主負担とオーナー負担の判断基準

オーナー負担になるもの(通常損耗・経年劣化)

  • 日焼けによる色褪せ・変色
  • 通常使用による磨耗・ほつれ
  • 家具設置による凹み跡(畳の性質上、ある程度の凹みは避けられない)

借主負担になるもの(故意・過失)

  • タバコの焦げ跡(畳表が溶けて穴が開いているケース)
  • 飲み物をこぼして放置したことによる変色・カビ
  • ペットが掘り起こした傷・尿による染み・臭い
  • 重い家具をずっと引きずって表面を毀損した傷

ペット可物件での畳の損傷は特に判断が難しいケースです。ペット損傷の費用負担ガイドで具体的な事例と請求の考え方を解説しています。

経年劣化の全般的な考え方については経年劣化と原状回復の基礎知識が参考になります。

タバコの損傷が畳に及んでいる場合の対応は

焦げ・ヤニ汚染への対処

喫煙者が居住した物件の畳は、タバコの焦げ跡・ヤニの変色・臭いが複合的に発生します。

焦げ跡のみの場合:焦げている部分だけのイ草が切れているため、表替えでほぼ解消されます。焦げが1〜2箇所で小さいなら、部分的なリペアで対応できるケースもあります(1箇所あたり3,000〜8,000円)。

ヤニ汚染が畳床に及んでいる場合:ヤニは畳床に浸透するため、表替えだけでは臭いが残ります。消臭処理(1畳あたり2,000〜5,000円)か、新調が必要になります。

部屋全体の臭いが強い場合:畳を新調しても壁紙・床板に臭いが残っていれば、内見時に判断されます。クロスの張替えと合わせて施工するのが現実的です。タバコ損傷の費用負担も参照してください。

タバコ損傷は借主に費用請求できるか

タバコの損傷は「通常使用による損耗」には含まれません。故意・過失による損傷として、借主に費用請求できます。ただし、請求できるのは「タバコ損傷がなければ必要なかった施工費用」に限定されます。

経年劣化で本来オーナー負担になる部分は差し引いて請求する必要があります。特約の有効性と限界で詳しく解説しています。

畳の張替え費用を抑える方法はあるか

方法1: 状態に合った施工方法を選ぶ

最もシンプルなコスト削減は「必要以上の施工をしない」ことです。畳床が問題なければ新調は不要です。表替えで十分な状態なのに新調を提案してくる業者には注意が必要です。

「退去清算のたびに新調している」という管理会社は、畳職人が状態確認を省いているか、中間業者が利益を優先している可能性があります。現地確認を丁寧に行い、状態に合った施工を選ぶだけで、1回あたりの施工費を20,000〜50,000円削減できます。

方法2: 発注構造を見直す

畳工事の費用が高くなる主な原因は、管理会社→元請け→畳職人という多重下請け構造です。各層に10〜20%のマージンが発生します。

LinKでは、60社以上の協力会社(畳職人・クロス職人・設備業者など)に直接発注しています。吉野が現場を確認し、専門の畳職人に直接依頼するため、中間マージンが発生しません。同品質の施工で15〜30%のコスト削減が可能です。

見積もりの読み方ガイドでも触れていますが、発注先の構造を知ることが適正価格の判断基準になります。

方法3: 畳・クロス・クリーニングをまとめて発注する

退去後の原状回復工事は、畳・クロス・クリーニングを別々の業者に発注すると、段取り費・養生費・廃材処分費が重複して発生します。一業者にまとめて依頼することで、工種間の調整コストと日当たりの工賃を圧縮できます。

複数見積もりで適正価格を見極める方法で、相見積もりのポイントと発注構造の見極め方を解説しています。

方法4: フローリングへの変更を検討する

和室の需要は地域・間取りによって異なります。「和室がネックで入居付けに苦戦している」物件では、畳をフローリングやCF(クッションフロア)に変更するリフォームが選択肢になります。

フローリングへの変更費用は6畳で15〜30万円程度(下地処理・フローリング材・施工費含む)です。今後の退去ごとの畳原状回復費用と入居者層の広がりを試算すると、変更が有利になるケースがあります。フローリング張替えの費用相場も参考にしてください。

よくある質問

Q. 畳の表替えと新畳交換、どちらが多く依頼されますか?

A. 賃貸の原状回復では、表替えが圧倒的に多いです。畳床が健全であれば表替えで十分で、費用が新調の4〜8分の1で済みます。新調が必要になるのは、畳床のへたり・カビ・水濡れ損傷がある場合や、使用年数が10〜15年以上で複数回表替え済みの場合です。判断に迷う場合は現地確認の際に畳床の状態を触って確認してください。

Q. 畳の臭いだけが問題の場合、表替えで解消できますか?

A. 畳の臭いの原因によります。イ草表面の日焼け臭・加齢臭は表替えで解消されます。一方、ペットの尿・タバコのヤニ・カビが畳床に浸透している場合は、表替えだけでは臭いが残ります。表替え前に畳床の状態を確認し、必要であれば消臭処理(1畳あたり2,000〜5,000円)か新調を選んでください。臭いが強い場合は、クロスや床板にも臭いが染み込んでいる可能性があります。ハウスクリーニングとの組み合わせで対応を検討してください(退去時クリーニングの費用相場参照)。

Q. 退去時に借主へ畳の費用を請求する際の注意点は?

A. 国土交通省のガイドラインでは、畳表の耐用年数は6年とされています。居住年数6年以上の場合、表替え費用の借主負担はほぼゼロになります。居住年数が短い場合でも、通常使用による色褪せ・磨耗は経年劣化として借主請求はできません。借主に請求できるのは、タバコの焦げ・ペット損傷・水濡れ放置など「故意・過失による損傷」に限られます。費用請求の際は、損傷箇所の写真と施工前後の記録を残しておくことをすすめます。詳しくは敷金返還のルールを参照してください。


株式会社LinK / 代表取締役 吉野 博 原状回復・リフォーム・リノベーション 関東一都三県対応(東京・千葉・埼玉・神奈川) HP: https://link-8.jp お問い合わせ: 03-6825-2464

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