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業界知識

職人不足時代の発注戦略|確保できない管理会社が増えている

吉野 博

株式会社LinK 代表 / 業界歴約11年 / 原状回復・リフォーム専門

「退去が出たのに、業者に電話しても空きがない」「見積もりを依頼したら2週間後と言われた」——ここ数年、管理会社の担当者から届く相談の中に、こういった声が確実に増えています。

その背景にあるのは、個別の業者の問題ではありません。建設・内装業界全体で職人の絶対数が減り続けているという構造的な変化です。

この記事では、職人不足の実態を数字で確認したうえで、管理会社がこの状況を乗り越えるための発注戦略を具体的に解説します。「なぜ職人が来てくれないのか」「どう動けば工期を安定させられるのか」——読み終えた後に、次の一手が見えるはずです。


職人不足はどれほど深刻なのか?

建設業就業者数の推移が示す現実

国土交通省の調査によると、建設業の就業者数は1997年のピーク時約685万人から、2023年には約479万人まで減少しています。約25年で200万人以上が業界を去った計算です。この間、日本の総就業者数はほぼ横ばいで推移していますので、建設業だけが突出して縮小していることがわかります。

原状回復を担うクロス職人・塗装職人・床職人・ハウスクリーニングのスタッフは、この「建設・内装業界」に属します。職人の総数が減れば、当然ながら管理会社が依頼できる職人の数も減ります。

「以前は3社に電話すれば1社は空いていたのに、今は5社かけても全員埋まっている」という感覚は、この数字の変化を体感しているにすぎません。

高齢化率が示す「10年後の崩壊」

就業者数の減少と同時に深刻なのが、高齢化です。国土交通省の建設労働需給調査によると、建設技能労働者(職人)のうち55歳以上が占める割合は全体の約35%に達しており、29歳以下の若年層は約12%にとどまります。

単純計算で、現在の職人の3人に1人が10年以内に引退します。その穴を若手が埋めるためには、今の若年層の入職者数を2〜3倍に増やす必要があります。しかし、建設業への若者の入職者数は横ばいからむしろ減少傾向です。

つまり、職人不足は「今が一番マシ」な状態と言えます。何も手を打たなければ、5年後・10年後はさらに深刻になります。

人手不足倒産という新たなリスク

職人不足は業者側にも深刻な影響を与えています。帝国データバンクの調査によると、2023年の人手不足倒産件数は260件を超え、過去最多水準を更新しました。このうち建設業が占める割合は全業種の中でも高く、「仕事はある、しかし人手がないため受けられない」という理由での廃業や倒産が増えています。

これが管理会社にとって何を意味するかというと、「今まで使っていた業者が突然連絡に応じなくなる」「信頼していた職人が独立・廃業して連絡先が変わる」というリスクが現実のものになっている、ということです。長年付き合ってきた1社への依存体制は、この環境では危険です。


なぜ繁忙期になると職人が確保できないのか?

3月の退去集中が職人争奪戦を生む

原状回復の繁忙期は、3月の退去シーズンに集中します。賃貸物件の解約が年間を通じて最も多い月であり、管理会社も施工業者も一斉に動く時期です。

この時期、全管理会社から同時に「職人を出してほしい」という依頼が殺到します。職人の数が限られている中で、業者は「誰の仕事を優先するか」という判断を迫られます。その判断基準はシンプルで、「日常的に取引のある管理会社」が優先されます。

スポットで依頼してくる会社は後回しにされます。急ぎでお願いしたいとき、業者の判断で後になる——これが「繁忙期に職人が確保できない」問題の本質です。

3月の繁忙期を乗り越えるための具体的なスケジュール管理については3月の繁忙期を乗り切る原状回復スケジュール術で解説しています。

首都圏の競合過多が職人の奪い合いを加速させる

東京・千葉・埼玉・神奈川の首都圏では、賃貸管理の物件数が多い分、原状回復の需要も集中します。一方、職人の数は全国的に減少しており、地方に比べて首都圏は「仕事量に対して職人の絶対数が不足している状態」が常態化しています。

特に、ワンルーム・1Kといった小規模物件は工事の単価が低いため、職人側から見た収益性が低い案件です。単価の低い案件を後回しにする業者が増えると、管理会社が持つ小規模物件ポートフォリオの工期が崩れやすくなります。

下請け構造が職人不足をさらに複雑にする

原状回復の業界では、元請け業者が仕事を受けて、実際の施工を別の職人・業者に外注するという多重構造が一般的です。元請けが「対応します」と言っても、その下請けの職人が確保できなければ工期は守れません。

管理会社が「業者に頼んでいるのになぜ職人が来ないのか」と感じる状況の多くは、この多重構造の中で職人の確保に失敗しているケースです。元請けと実際の施工者が一致しているか、業者の体制を確認することが重要です。


職人不足が管理会社の収益に与える具体的なダメージは?

空室損失が積み上がる仕組み

工期が延びるごとに、空室損失が発生します。例として、月額賃料6万円の1K物件で計算してみます。

  • 工期が1週間延びると:約1.5万円の空室損失
  • 工期が2週間延びると:約3万円の空室損失
  • 退去が年間30件あり、平均1週間延びると:年間約45万円の損失

職人不足による工期の長期化は、コスト増ではなく「機会損失」として収益を削ります。この損失は見積書には表れないため、意識されにくいですが、管理会社にとっては無視できない金額です。

単価の上昇が止まらない

職人不足は単価にも直結します。需要が供給を上回れば価格は上がる——この単純な経済原則が、原状回復の単価を押し上げています。

国土交通省の建設工事費デフレーターでは、内装材・人件費を含む内装工事の費用指数がここ数年で20〜30%程度上昇しています。材料費(クロス、CF(クッションフロア)、塗料)の高騰に加え、職人の日当も上昇傾向です。

2019年と2024年で、同じ条件の原状回復工事の見積もりを比較すると、20〜25%高くなっていることは珍しくありません。この上昇が今後も続くことは避けられません。

業者変更のリスクとコスト

職人不足の影響で今の業者に頼れなくなり、急いで別の業者を探すと、判断を急ぐためにコストが上がります。新規業者との取引では品質の確認が取れておらず、施工トラブルのリスクも上がります。

業者の選び方と失敗しない発注の基準については原状回復業者の選び方と失敗しない発注の基準で詳しく解説しています。


職人不足時代に管理会社が取るべき発注戦略とは?

「スポット発注」から「関係性発注」へのシフト

職人不足時代の発注戦略の核心は、「スポット発注から関係性発注へのシフト」です。

スポット発注とは、退去のたびに複数の業者に連絡して安い見積もりを取るスタイルです。コスト管理という観点では一見合理的ですが、職人が不足する環境では致命的な弱点があります——繁忙期に後回しにされる、です。

関係性発注とは、日常的に取引を継続している業者を中心に発注を集約するスタイルです。業者側からすると「安定した取引先」は職人の確保を優先する理由になります。繁忙期でも対応してもらいやすくなり、交渉余地も生まれます。

協力会社ネットワークを持つ業者を選ぶ

職人不足の影響を受けにくい業者の特徴は、「特定の1職人に依存していない体制」を持っていることです。クロス職人AがNG→すぐに職人Bへ。塗装業者が混んでいる→別の塗装専門業者を当てる。このような複数の職人・業者とのネットワークがある業者は、工期の安定性が根本的に違います。

逆に、実質的に1〜2人の職人に依存している業者は、その職人が病気・繁忙・廃業になった瞬間に機能不全に陥ります。

業者に確認すべき質問は「繁忙期に職人が取れない場合の代替手段はありますか?」です。具体的な答えが返ってくる業者は、体制として対応できています。答えが曖昧な業者は、個人の職人への依存体制である可能性が高いです。

LinKでは60社以上の協力会社ネットワークを構築しており、クロス・塗装・床・クリーニング・設備各分野に複数の専門業者を持っています。1社が対応できない場合でも、同水準の別の専門業者に振れる体制で工期の安定を担保しています。

発注の集約と年間計画化

管理戸数が多い管理会社であれば、発注を1〜2社に集約して年間の案件量を業者に伝えることで、業者側が職人の確保計画を立てやすくなります。

「だいたい月に○件くらい退去が出ます」「毎年3月は○〜○件程度まとめて発生します」という情報を業者と共有することで、業者側はその会社のために職人のスケジュールを確保できます。

スポットで「急ぎで対応して」という依頼が続く管理会社より、計画的に案件情報を共有してくれる管理会社の方が、業者は職人を確保しやすい。この単純な事実が、発注の集約化を有効な戦略にします。


発注業者を選ぶ際に確認すべき5つのポイント

職人確保体制の透明性を確認する

「繁忙期でも対応できますか?」という質問への答えが「大丈夫です」だけの業者は要注意です。確認すべきは、体制の具体性です。

  • クロス・床・クリーニング等の工種ごとに複数の専門業者を抱えているか
  • 1職人・1業者が対応できない場合の代替手段があるか
  • 3月の繁忙期に職人を確保できなかった過去の事例があるか

この3点を具体的に答えられる業者は、体制を持っています。「うちは大丈夫」という根拠のない返答は、リスクのサインです。

見積もりの内訳明示を確認する

見積書が「一式○○万円」の業者と、「クロス張替○㎡×○円/㎡」「CF張替○㎡×○円/㎡」という内訳が明示されている業者では、コスト管理の精度が根本的に違います。

内訳が明示されている業者は、数量・単価を確認できるため、適正価格かどうかを判断できます。一式見積もりは、その中身が見えないため、高値をつけられても気づきにくい構造になっています。

見積書の読み方と内訳の確認方法については見積書の見方と透明性の確認方法を参照してください。

施工後の報告体制を確認する

工事完了後に写真付きの報告書が届くかどうかは、管理会社の業務効率に直結します。スマートフォンの写真をメールに添付するだけの業者と、箇所ごとにビフォー・アフター写真が整理されたレポートを提供する業者では、オーナーへの報告業務の手間が大きく違います。

報告体制を事前に確認する具体的な方法については原状回復の進捗報告の仕組みで解説しています。

エリアカバー範囲と対応可能規模を確認する

管理物件が複数エリアにまたがる場合、業者のカバーエリアが自社の管理エリアと合致しているかを確認します。対応エリア外の物件に無理に入ってもらうと、交通費が加算されたり、職人の移動時間が工期に影響したりします。

また、月間の対応可能件数を確認することも重要です。繁忙期に同時並行で動ける件数の上限を持っていない業者に発注を集約すると、繁忙期に処理能力の限界で工期が崩れます。

DX対応力を確認する

デジタルで見積書・報告書・進捗状況を共有できる業者は、管理会社側の記録・報告業務を大幅に削減します。FAXと電話しか使わない業者との取引は、担当者の電話対応コストが高く、記録も残りにくい。

「クラウドで見積書・報告書を共有できますか?」という一言で、業者のDX対応状況を確認できます。DX化が原状回復業務に与える効果についてはDXで変わる原状回復管理で解説しています。


今の取引業者を見直すタイミングはいつか?

これらのサインが出たら見直しを検討する

現在の取引業者との関係を見直すべきサインを整理します。以下の項目が複数当てはまる場合は、今が見直しのタイミングです。

  • 繁忙期(特に3月)に希望の工期で対応してもらえなかったことがある
  • 見積もりが「一式」でしか出てこない
  • 工事完了後の報告が写真の羅列で、整理されていない
  • 担当者が変わるたびに工事の品質がぶれる感覚がある
  • 「空いていない」という返事が年に2〜3回以上ある

これらは、業者の職人確保体制・報告体制・仕組み化の度合いを示す指標です。1つならまだしも、複数当てはまる場合は体制そのものに課題があります。

現業者との関係を壊さずに並行確認する方法

見直しを検討する際、現在の業者との関係を一度に切る必要はありません。次の退去案件で、別の業者にも見積もりを依頼して比較するところから始められます。

比較する際のポイントは「金額」だけでなく、「内訳の明示があるか」「報告体制の説明があるか」「繁忙期の対応実績があるか」の3点です。金額だけで判断すると、安い業者が実は職人確保に問題を抱えていた、というケースは少なくありません。

複数業者との関係を並行して持つことの意義

「1社に絞り込んで関係を深める」と「複数の業者との関係を持つ」は矛盾しているように聞こえますが、実際には両立できます。

メイン発注先を1社に絞りながら、同時に「バックアップとして声をかけられる業者」を1〜2社持っておくことで、繁忙期にメイン業者が対応できない案件をバックアップに回せます。この体制が、工期の安定と業者への過度な依存のどちらも防ぎます。


よくある質問

Q. 相見積もりを増やせば職人不足の影響を回避できますか?

A. 相見積もりは短期的なコスト管理には有効ですが、職人確保の面では逆効果になるケースがあります。業者は「定期的に発注してくれる管理会社」の職人確保を優先するため、相見積もりだけのスポット依頼は繁忙期に後回しにされるリスクがあります。相見積もりを取りながらも、実績のある業者との継続的な関係を維持することが、コストと工期の両方を安定させる現実的な戦略です。

Q. 職人不足は今後解消されますか?

A. 解消される見込みは低いです。国土交通省の将来推計では、建設技能労働者の需給ギャップは2030年代にかけてさらに拡大するとされています。若年入職者の増加も進んでいますが、引退する高齢職人の数には追いつきません。管理会社にとっては「職人不足が解消されるのを待つ」という選択肢はなく、不足した状態での安定確保体制を今から構築することが合理的です。

Q. 協力会社ネットワークを持つ業者は、どう見分けますか?

A. 「クロス・床・クリーニング・設備のそれぞれを別の専門業者に依頼していますか?それとも1社が全部やっていますか?」と直接聞くのが最も確実です。専門業者ネットワークを持つ業者は、工種ごとに複数の専門業者を抱えていることを自信を持って説明できます。「全部うちでやります」という業者は、実際には特定の少数職人に依存しているケースが多く、繁忙期の対応力が低い傾向があります。


職人不足は業界全体の構造問題であり、個々の管理会社が「頑張って探す」だけでは解決できません。今から発注体制を「関係性ベース」に変え、職人確保体制を持つ業者と継続的な取引を構築することが、工期と収益を守る唯一の現実的な戦略です。

職人手配でお困りの際は、LinKの協力会社ネットワークをご活用ください。東京・千葉・埼玉・神奈川の関東一都三県で、60社以上の専門業者との連携体制でお応えします。


株式会社LinK / 代表取締役 吉野 博 原状回復・リフォーム・リノベーション 関東一都三県対応(東京・千葉・埼玉・神奈川) HP: https://link-8.jp お問い合わせ: 03-6825-2464

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