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管理会社Tips

繁忙期(1〜3月)の原状回復を乗り切るには? 工期遅延・費用上昇を防ぐ具体策

吉野 博

株式会社LinK 代表 / 業界歴約11年 / 原状回復・リフォーム専門

毎年1月に入ると「また今年も始まった」と身が引き締まる管理会社の担当者さんは多いはずです。年明けから3月末にかけて退去が集中し、原状回復工事の依頼が一気に積み上がる繁忙期。職人は足りない、工期は押す、オーナーからは「早く次の入居者を」とプレッシャーがかかる。

結論から言うと、繁忙期の問題は**「事前に手を打てるかどうか」で9割が決まります**。年末までに退去予定を把握し、業者への仮予約を入れ、複数業者との関係を構築しておく。この3つを実行している管理会社は、毎年余裕を持って繁忙期を乗り切っています。

この記事では、繁忙期に退去が集中する構造的な理由、実際に起きる3つの問題、乗り切るための具体的な段取り、閑散期にやるべき準備、そして繁忙期料金の交渉テクニックまで整理します。

なぜ1〜3月に退去が集中するのか

引越し需要の集中が根本原因

退去が繁忙期に集中する最大の要因は「引越し需要の集中」です。

3〜4月の入学・就職・転勤シーズンに合わせ、2〜3月に引越しが集中します。賃貸契約の多くは「月末退去」で設定されており、1〜3月末での退去通知が年間で最も多くなります。

不動産業界の統計では、1〜3月の引越し件数が年間の約**35〜40%**を占めるとされています。これは残り9ヶ月分の約3倍のペース。関東一都三県(東京・千葉・埼玉・神奈川)では、3月の人事異動に合わせた転勤族の引越しが特に多いため、都市部の管理会社ほどこの影響を受けます。

年間スケジュールの中での位置づけ

時期 退去件数の傾向 原状回復の需給状況
1〜3月 年間の35〜40% 極めてタイト。着工待ち発生
4月 多い(3月末退去の処理) タイト
5〜9月 少ない(閑散期) 余裕あり。単価も安定
10〜12月 普通〜やや多い 通常。年明けの準備期間

この年間サイクルは毎年同じ形で繰り返されます。だからこそ、対策も毎年同じタイミングで先手を打てるのです。

繁忙期に起きる3つの問題とは

問題1: 工期の遅延

職人・業者のリソースは有限です。繁忙期には複数の物件で同時に工事が走るため、着工待ちが発生します。

通常なら退去から工事完了まで5〜10日で終わる案件が、繁忙期には2〜3週間かかることも珍しくありません。「入居申込が入ったのに部屋が仕上がっていない」という状況は、オーナーにとって直接的な家賃損失です。

家賃8万円の物件で工事が2週間遅れれば、約4万円の機会損失。管理している物件が10戸あれば、繁忙期全体で数十万円の損失になり得ます。

問題2: 品質の低下

業者側も繁忙期は余裕がありません。複数の現場を掛け持ちする職人が増え、一現場あたりにかける時間が短くなります。

「クロスのつなぎ目が浮いている」「フローリングの補修色が合っていない」といった手直し案件は、実感として繁忙期に増える傾向があります。手直しが発生すると、さらに工期が延び、次の入居者の入居日にも影響が出る悪循環です。

問題3: 費用の上昇

需要と供給の原則通り、繁忙期は工事単価が上がります。

時期 工事単価の傾向
閑散期(5〜9月) 通常単価〜5%程度安い
通常期(4月・10〜12月) 基準単価
繁忙期(1〜3月) 基準単価より5〜15%程度高くなる場合あり

業者によっては「繁忙期割増」を明示しているところもあります。同じ工事内容でも費用が跳ね上がるため、事前に確認しておかないとオーナーとのトラブルにもなりかねません。

繁忙期を乗り切るための3つの具体策

対策1: 年内(12月中)に退去予定を把握し先行発注する

退去通知が届いた時点で、工事の仮予約を入れておくことが最も有効です。正式な発注は退去立会い後になりますが、「○月○日ごろ退去予定の物件があります」と事前に伝えておくだけで、業者側はスケジュールを押さえやすくなります。

具体的なスケジュール:

時期 やること
10〜11月 年明けに退去予定の入居者を把握する
11〜12月 工事業者に概算スケジュールを共有し仮枠を確保
退去立会い後 正式発注・詳細見積もりに移行

「まだ退去立会いも終わっていないのに」と思うかもしれませんが、スケジュールだけ先に確保することは十分可能です。仮予約は「その日は他の案件を入れないでほしい」という意味であり、正式発注ではありません。

対策2: 複数の業者と関係を構築しておく

1社だけに依存していると、その業者のキャパが埋まった時点でアウトです。メインの業者1社 + サブの業者2社程度を事前に把握しておくと、繁忙期の急な対応に強くなります。

複数業者を持つメリットはもう一つあります。見積もり比較ができるため、単価の妥当性を確認しやすくなる点です。「A社のクロス単価は1,200円/m²、B社は1,000円/m²」と比較できれば、適正価格の判断基準が持てます。

対策3: 退去立会いのスケジュールを前倒しにする

退去立会いは月末に集中しがちです。しかし、退去者に合理的な理由があれば月中旬での立会いに応じてもらえるケースもあります。

立会いが早まれば工事の着工も前倒しになり、業者の繁忙ピークをわずかでもずらせます。「3月25日退去 → 3月20日立会い」でも5日の差は大きい。5日あれば1Kの原状回復は完了できます。

閑散期(5〜9月)にやっておくべき準備とは

業者との関係構築が繁忙期を決める

閑散期(5〜9月)は工事依頼が減る時期です。この時期に積極的に業者と接点を持ち、年間を通じた取引関係を構築しておくことが、繁忙期のスケジュール確保に直結します。

「閑散期に発注を出してくれる管理会社の物件は、繁忙期も優先する」——業者の本音として、こういった優先順位は実際に存在します。閑散期にまったく発注がなく、繁忙期だけ急に依頼してくる管理会社は、どうしても後回しになります。

緊急対応用の業者リストを整備する

「緊急で頼めそうな業者リスト」を5〜9月の間に整備しておくと、繁忙期に慌てなくて済みます。

確認項目 チェック内容
対応可能エリア 管理物件の所在地をカバーしているか
対応可能な工事範囲 クロス・水回り・塗装・設備すべて対応可能か
見積もりの形式 工種・数量・単価の内訳を出せるか
繁忙期の増員体制 外注職人の確保状況はどうか
品質保証 仕上がり不良時の手直し対応があるか

これを閑散期に確認し、リスト化しておく。繁忙期に「業者を探す」という作業が発生した時点で、既に遅れていることになります。

繁忙期料金の実態と交渉テクニック

繁忙期の料金上昇は避けられない

正直に言うと、繁忙期の料金上昇は避けられない部分があります。需要が供給を大幅に上回る以上、市場原理として単価は上がります。ただし、交渉の余地がまったくないわけではありません。

テクニック1: まとめ発注で交渉力を持つ

複数物件を同じ業者にまとめて発注する場合、個別発注より有利な条件を引き出せることがあります。

「今月、うちの物件が5件退去になります。まとめてお願いできますか?」という形で相談するだけで、業者側も段取りがしやすくなるため、割引や優先対応を受けられるケースがあります。

テクニック2: 発注前に繁忙期料金を確認する

交渉は「発注前」にしか意味がありません。工事が終わってから「高い」と言っても手遅れです。

事前に「繁忙期の割増はありますか?」と確認し、割増がある場合は「何%程度ですか?」と具体的に聞く。これだけで、業者側の価格提示も変わってきます。知っている管理会社と知らない管理会社では、提示される金額が異なります。

テクニック3: 年間契約・優先発注の取り決め

まとまった件数を持つ管理会社なら、年間を通じた優先発注の取り決めを業者と結ぶことも有効です。

「繁忙期も優先対応してもらう代わりに、閑散期も発注を継続する」という形での合意は、お互いにメリットのある関係になります。LinKでも年間を通じてお取引いただいている管理会社さんには、繁忙期のスケジュールを優先的に確保しています。

繁忙期カレンダー——いつ何をすべきか

年間スケジュールを整理します。「いつ動き始めるか」が繁忙期の成否を決めます。

やるべきこと
5〜9月 業者リストの整備・新規業者の開拓・年間取引の取り決め
10月 年明け退去予定の把握開始
11月 業者に概算スケジュールを共有
12月 仮予約・スケジュール確保。繁忙期料金の確認
1月 退去通知が来たら即座に業者に連絡。立会い日程の前倒し交渉
2〜3月 工事の進捗管理。追加退去への対応。まとめ発注の交渉
4月 繁忙期の振り返り。業者との年間計画の見直し

「今年こそ繁忙期を余裕で乗り切りたい」と思うなら、今すぐ来年の準備を始めることが一番の近道です。

よくある質問

Q. 繁忙期にどのくらい工期が伸びますか?

A. 通常期なら退去から工事完了まで5〜10日の案件が、繁忙期には2〜3週間かかることがあります。特に3月中旬〜下旬は最も混み合う時期で、業者によっては新規受注を断るケースもあります。12月中に仮予約を入れておけば、この工期遅延リスクを大幅に下げられます。

Q. 繁忙期の割増料金はどのくらいですか?

A. 業者によりますが、基準単価より5〜15%程度の上昇が一般的です。クロス張替えで言えば、通常期1,200円/m²のところが繁忙期には1,300〜1,400円/m²になるイメージです。ただし、年間契約やまとめ発注で交渉することで、割増なしまたは最小限に抑えられるケースもあります。

Q. 小規模な管理会社でも繁忙期対策は効果がありますか?

A. 効果があります。管理戸数が少ない場合、1件の工期遅延が全体の収益に与えるインパクトが大きいため、むしろ事前対策の重要性が高いです。メインの業者1社との関係を深め、12月中にスケジュールを共有しておくだけで、繁忙期の対応は大きく変わります。

繁忙期の退去対応でお困りの際は、早めのご相談が工期短縮の鍵です。仮予約・事前スケジュール確保にも対応します。

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