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業界知識

事務所・テナントの原状回復|住居との違いと費用相場

吉野 博

株式会社LinK 代表 / 業界歴約11年 / 原状回復・リフォーム専門

「事務所の原状回復、住居と同じ感覚で発注していませんか?」——商業物件を管理する担当者から、よくいただく相談です。

結論から言うと、事務所・テナントの原状回復は住居(居住用)とまったく別物です。住居であれば国土交通省のガイドラインにより通常損耗(経年劣化)は貸主負担になりますが、事務所は「原状(入居前の状態)に戻す」が原則で、通常損耗も含めて借主が全額負担するケースがほとんどです。

この記事では、事務所原状回復の住居との根本的な違い、費用相場(小規模20坪で50〜100万円、中規模50坪で150〜300万円)、工事内容の詳細、A工事・B工事・C工事の区分、退去時のトラブル事例と対策、工期の目安まで、商業物件の原状回復を管理する担当者が知っておくべき情報をまとめています。

事務所の原状回復はなぜ住居と違うのか?

住居は「ガイドライン」、事務所は「契約書」が支配する

住居の原状回復は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が適用されます。このガイドラインでは、経年劣化や通常の使用による損耗は貸主(オーナー)負担と定められており、借主が全額を負担させられるケースはトラブルの対象になります。

事務所・テナント物件は別です。このガイドラインは居住用を対象としており、事務所・店舗などの商業物件には原則として適用されません(東京高裁 平成12年12月27日判決等参照)。つまり、原状回復の範囲は賃貸借契約書の記載内容がすべてを決めます。

「原状に回復すること」とだけ書かれた契約書でも、通常損耗を含む完全な原状回復が求められると解釈されるのが事務所物件の実態です。

「原状」の定義が住居より厳格

住居では「入居前と同等の状態」を目指しますが、事務所ではスケルトン返し(内装を全部撤去して躯体のみにする状態)を求めるケースも珍しくありません。

具体的には、入居時にテナントが設置した以下の設備・内装がすべて撤去対象になります。

  • 間仕切り壁・パーティション
  • OAフロア(フリーアクセスフロア)
  • 増設した電気配線・コンセント
  • エアコン(テナントが設置したもの)
  • 天井の照明・スプリンクラー位置変更
  • サーバールーム・会議室等の特殊仕様

住居であれば経年劣化として扱われるクロスの変色や床の傷も、事務所では借主が原状に戻す義務を負います。「10年使ったのだから減価償却で」という住居的な考え方は、事務所では通じません。

消費税の扱いも異なる

住居の原状回復費用に消費税は課税されません(居住用賃貸に係る非課税の適用)。一方、事務所・テナントの原状回復費用には消費税が課税されます。費用比較の際は税込金額で確認することが必要です。

事務所原状回復の費用相場はいくらか?

坪数別の費用目安

事務所・テナントの原状回復費用は、坪数(施工面積)と原状の内容によって大きく変わります。関東一都三県(東京・千葉・埼玉・神奈川)における目安は以下のとおりです。

規模 坪数目安 費用相場 工期目安
小規模オフィス 〜20坪 50〜100万円 1〜2週間
中規模オフィス 20〜50坪 150〜300万円 2〜3週間
大規模オフィス 50〜100坪 300〜600万円 3〜4週間
店舗・飲食テナント 規模による 坪単価3〜10万円 規模による

飲食店テナントは内装の特殊性(グリストラップ・ダクト・厨房設備等)から、オフィスより大幅に高くなるケースがあります。坪単価5〜10万円を目安としてください。

費用が変動する主な要因

1. スケルトン返しか内装残しか

入居時の状態(内装ありか躯体のみか)によって、原状回復の内容が根本的に異なります。内装ありで入居した場合はその状態に戻せばよく、スケルトンで入居した場合はすべての内装を撤去する必要があります。契約書と入居時の現況確認書の確認が必須です。

2. テナントが設置した設備の量

長期入居のテナントほど、間仕切りや電気配線の増設が多くなります。工事着手前の現場調査で設置物を正確に把握しないと、見積もりと実費に大きな乖離が生じます。

3. ビルのA工事・B工事・C工事の区分

後述しますが、どの工事をビル指定業者が行うかによって費用構造が変わります。テナントが自由に発注できるC工事の範囲が広いほど、費用を抑えやすくなります。

A工事・B工事・C工事とはどう違うのか?

3区分の定義と費用の関係

事務所・テナントの原状回復では、工事内容がA・B・C工事の3区分に分類されます。どの区分に該当するかで、発注先と費用負担者が変わります。

A工事 ビル(オーナー)が発注し、費用もビル負担の工事。共用部の修繕、外壁、躯体など。テナントの原状回復とは関係なく実施される。

B工事 ビル(オーナー)が発注するが、費用はテナント負担の工事。空調の幹線設備、防災設備、電気幹線など。ビル指定業者が施工するため、テナントは業者を選べない。「ビル指定業者の単価が高い」と感じるケースが多い。

B工事の落とし穴: テナントはB工事の発注業者を選べません。ビル管理会社が指定する業者が施工し、その単価設定もビル側に決定権があります。退去時に「エアコンの撤去はB工事」と指定されると、指定業者の単価で請求されることになります。

C工事 テナントが自由に発注し、費用もテナント負担の工事。内装工事、パーティション、OAフロア、照明など。テナントが独自に業者を選定できるため、競争見積もりによるコスト最適化が可能。

入居前にB工事の範囲を確認する重要性

退去時のトラブルを防ぐには、入居前にA・B・C工事の区分と各工事の概算費用を確認しておくことが不可欠です。入居後に「このエアコン撤去はB工事です」と言われると、単価交渉の余地がほとんどなくなります。

契約前の段階でB工事の概算費用をビル側に確認し、退去時の原状回復費用の予測を立てておくことをお勧めします。原状回復業者との契約チェックリストも参照してください。

事務所原状回復の工事内容は何が含まれるのか?

標準的な工事項目と単価目安

事務所の原状回復で発生する主な工事内容と、関東一都三県の参考単価です。

工事項目 参考単価 単位
クロス(壁紙)張替え 900〜1,400円 /m²
OAフロア撤去・復旧 5,000〜12,000円 /m²
パーティション撤去 8,000〜25,000円 /m²
電気配線撤去・復旧 5,000〜15,000円 /箇所
エアコン(テナント設置分)撤去 30,000〜100,000円 /台
ハウスクリーニング(20坪) 80,000〜150,000円 /件
照明器具撤去・復旧 5,000〜15,000円 /箇所
床タイルカーペット撤去 2,000〜5,000円 /m²

上記はあくまで参考値です。実際の費用は現場調査なしには確定しません。特にOAフロアとパーティションは、設置方法や材質によって撤去費用が大きく変わります。

OAフロアの原状回復で見落としやすいポイント

OAフロア(フリーアクセスフロア:床下に配線スペースを設けた二重床)は、事務所特有の原状回復工事です。

撤去自体の費用に加え、OAフロアを設置する際に傷めた既存床の補修費用が別途発生することがあります。入居時の現況確認書にOAフロア設置前の床状態が記録されていないと、「もともとあった傷」と「テナントが設置したOAフロアによる傷」の判別ができなくなります。

入居時の現況確認書に写真を添付し、床の状態を詳細に記録しておくことが、退去時の争いを防ぐ最善策です。

特殊設備の撤去で費用が膨らむケース

サーバールーム・データセンター仕様 床補強、空調の増設、UPS(無停電電源装置)設置など、特殊仕様のサーバールームは撤去費用が跳ね上がります。場合によっては数百万円規模になることがあります。

ダクト工事(飲食テナント) 飲食店が退去する際、厨房排気ダクトの撤去と原状回復は高額になります。グリストラップ(油脂分離槽)の清掃・撤去も別途費用が発生します。

防音工事 音楽スタジオや録音室など、防音工事を施した物件は、撤去費用が通常の内装工事より大幅に高くなります。

事務所退去時に起きやすいトラブルと対策

トラブル1: 入居時との原状が不明確

「入居前がスケルトンだったか内装ありだったか、記録がない」——商業物件管理でよくある話です。入居時の状況が不明確なまま退去を迎えると、原状回復の範囲で貸主・借主の認識が食い違い、交渉が長期化します。

対策: 入居時に現況確認書を作成し、内装状態・設備設置状況を写真付きで記録する。スケルトン入居の場合は「スケルトンで引き渡した」旨を契約書に明記する。

トラブル2: 見積もりと実費の乖離

「見積もりでは100万円だったのに、工事完了後に150万円の請求が来た」——現場を見ずに写真だけで見積もりを出す業者に多いパターンです。事務所物件は住居より現場の複雑さが高く、写真だけでは把握しきれない工事が発生しやすい構造があります。

対策: 必ず現場確認を行う業者に見積もりを依頼する。「現場確認なし=追加費用リスクあり」と認識してください。また、見積書に「追加工事が発生した場合の承認フロー」が明記されているか確認することが重要です。原状回復業者の選び方も参照してください。

トラブル3: B工事の費用が後から発覚

入居時にB工事の範囲を確認していなかったため、退去時に「空調撤去はB工事(指定業者)でお願いします」と言われ、想定外の費用が発生するケースです。

対策: 入居前にB工事の範囲と概算費用をビル側に確認し、契約書に記録する。退去時の費用シミュレーションを入居前に行うことが理想的です。

トラブル4: 工事期間中の家賃発生

原状回復工事が完了するまで賃料が発生し続ける契約になっている場合、工事が長引くほどテナントの負担が増えます。一方で、工事を急かすと品質が下がり、ビル側から瑕疵(かし)を指摘されるリスクも高まります。

対策: 退去予定日を決めたら早めに業者に相談し、工程表を作成する。退去日から逆算して発注スケジュールを組むことが、工期短縮と品質維持の両立につながります。

工事の工期はどのくらい見ればいいか?

規模別の標準工期

事務所原状回復の工期は、坪数と工事内容によって以下が目安です。

規模 工期目安
20坪以下の小規模オフィス 1〜2週間
20〜50坪の中規模オフィス 2〜3週間
50坪以上の大規模オフィス 3〜4週間以上
スケルトン返し(大規模) 4〜6週間

工期を左右する最大の要因は、パーティション・OAフロアの量B工事の段取りです。B工事はビル指定業者のスケジュールに依存するため、テナント側でコントロールできません。早期に確認・調整を行うことが工期短縮の鍵になります。

工期短縮のための3つのポイント

1. 退去意思を早めに伝える 解約予告は一般的に6ヶ月前(契約による)ですが、業者への発注はそれより早く動き始める必要があります。退去決定後、できるだけ早い段階で現場調査と見積もりを依頼してください。

2. 複数工種の並行作業 パーティション撤去と電気配線撤去を並行して進めることで、工期を短縮できます。ただし、複数業者が同一現場で同時作業するには、工程管理の能力がある発注先を選ぶことが前提です。

3. B工事業者のスケジュール確保 B工事(ビル指定業者)のスケジュールを早期に押さえることが、工期全体のボトルネックになります。C工事の発注前にB工事の工程を確認してください。

よくある質問

Q. 住居の原状回復ガイドラインは事務所にも適用されますか?

A. 原則として適用されません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は居住用賃貸を対象としており、事務所・テナントには適用されないというのが裁判所の一般的な判断です。事務所の原状回復範囲は賃貸借契約書の記載内容によって決まります。ただし、個人事業主が事務所として使用していた物件などで、居住用との性質が混在する場合は個別判断が必要なケースもあります。

Q. 事務所の原状回復費用は誰が支払うのですか?

A. C工事の費用はテナント(借主)が全額負担するのが原則です。B工事はビル指定業者が施工し費用はテナント負担、A工事のみビル(オーナー)負担です。ただし、入居時の特約や交渉によって負担割合が変わることもあります。退去時ではなく入居時に負担区分を明確にしておくことが最善策です。

Q. 事務所の原状回復で相見積もりは有効ですか?

A. C工事の範囲では有効です。C工事はテナントが自由に発注先を選べるため、複数社から見積もりを取ることで費用を最適化できます。一方、B工事はビル指定業者のみが行うため相見積もりができません。B工事の範囲が広い物件ほど、テナントの費用コントロール余地は狭くなります。C工事の見積もりは必ず現場確認を行う業者を選び、内訳付きの見積書で比較してください。


株式会社LinK / 代表取締役 吉野 博 原状回復・リフォーム・リノベーション 関東一都三県対応(東京・千葉・埼玉・神奈川) HP: https://link-8.jp お問い合わせ: 03-6825-2464

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