買取再販の工事で販売予定日がずれる。発注する側が先に決めておく5つのこと
「販売予定日は動かせないのに、工事が押している」「見積の返事がまだ来ない」——買取再販の物件を扱っていると、こういう場面が必ず出てきます。
結論から言えば、工期が押す原因のほとんどは職人の腕ではありません。着工より前、発注の段取りの段階で決まっています。逆に言えば、発注する側が先に決めておけば防げるものが大半です。
この記事では、買取再販の工事で販売予定日を守るために、発注する側が着工前に決めておくべき5つのことを解説します。実際に工事を受ける側から見て、「ここが決まっていない案件は遅れる」という順に並べました。
なぜ買取再販の工事は、販売予定日に間に合わなくなるのか
買取再販の工事が遅れるとき、現場では次の3つのどれかが起きています。
解体して初めて分かることがある
中古物件の工事は、壁を開けるまで中の状態が分かりません。給排水管の劣化、下地の腐り、配線の古さ。図面と現物が違うことも珍しくありません。
問題は「想定外が出ること」ではなく、想定外が出たときに誰がいつ判断するかが決まっていないことです。判断待ちで現場が止まっている時間は、そのまま工期に足されます。
職人の手配が「押さえた」だけで確定していない
工事は複数の職人が順番に入ります。前の工程が1日ずれると、次の職人の予定に入れなくなり、空いた日まで待つことになります。1日の遅れが3日、5日に膨らむのはこの構造です。
とくに繁忙期は、いったん外れた枠が次にいつ空くか読めません。
追加が出るたびに判断が止まる
「この部分も直しますか」という相談が、そのつど電話やメールで飛んできます。担当者が現場を見に行けないと判断できず、返事が翌日になる。これが数回積み重なると、それだけで1週間動きます。
遅れの原因は、業者の腕ではなく発注の段取りにある
上の3つは、どれも着工前に決めておけば防げます。
弊社が工事を受けていて「この案件は遅れそうだ」と感じるのは、次の2つが曖昧なときです。
「いつ出せるか」を聞いていない
見積を依頼するとき、多くの方は金額だけを気にされます。ですが販売予定日から逆算するなら、**先に確認すべきは「いつ回答が来るか」**です。
見積が5日かかる会社と、その日のうちに概算が出る会社では、着工日が5日変わります。工事の中身が同じでも、販売予定日に間に合うかどうかが変わってきます。
工事範囲の線引きが口頭のまま
「一式でお願いします」で始まった工事は、あとで必ずもめます。どこまでが見積の中で、どこからが追加なのか。その線が文章になっていないと、解体後の判断がすべて交渉になります。
見積書の読み方については、一式見積もりは危険? 原状回復の見積書を正しく読む5つのチェックポイントでも解説しています。なぜ内訳が出てこないのかという業界の構造はこちらにまとめました。
発注する側が先に決めておく5つのこと
ここからが本題です。着工前に、この5つを決めてください。順番も大事です。
1. 見積の回答日を、最初に確認する
「見積をお願いします」ではなく、「いつ出せますか」から聞いてください。
現地で出せるものと持ち帰る必要があるものは、工事の内容で変わります。内装だけなら現地で概算が出せますが、給排水や電気が絡むと業者の確認が要ります。そこを分けて答えられる会社かどうかも、同時に分かります。
回答日が決まれば、そこから着工日と完工日が引けます。逆に、回答日が読めないまま販売予定日を先に決めると、必ずどこかで無理が出ます。
2. 追加費用が出る条件を、着工前に文章にしておく
追加は出ます。中古物件の工事で追加がゼロというのは、逆に何かを見落としています。
決めておくべきは「追加を出さない」ではなく、**「追加が出たときにどう進めるか」**です。
- 弊社が受けている工事でいちばん多いのは、下地の腐りとシロアリの被害です。クロスを剥がす、床を上げる。そこで初めて分かります
- 金額がいくらを超えたら連絡するか
- 誰が承認するか(担当者か、上長か)
- 連絡から承認までの目安時間
ここを着工前に一枚の紙にしておくと、現場は止まりません。住宅リフォーム推進協議会の2025年度の調査では、リフォームを実施した人のおよそ30%が「実際の費用が予算を上回った」と答えています。個人の工事でこの割合ですから、中古物件の工事ではなおさら、追加の扱いを先に決めておく価値があります。
3. 工程は「完工日」ではなく「引き渡しから逆算」で組む
よくあるのが、着工日から順に足していって完工日を出す組み方です。これだと最後の工程が押したときに逃げ場がありません。
引き渡し日から引き算してください。
| 逆算の順番 | やること | 押さえる相手 | ここが遅れると |
|---|---|---|---|
| ① | 引き渡し・鍵の受け渡し | 買主 | 販売そのものがずれる |
| ② | 最終確認・是正 | 自社/施工会社 | 直しが出ると①が動く |
| ③ | ハウスクリーニング | クリーニング業者 | 内見の第一印象が落ちる |
| ④ | 内装仕上げ(クロス・床) | 内装業者 | ③が入れない |
| ⑤ | 設備の設置・接続 | 設備業者 | ④の職人が入れない |
| ⑥ | 解体・下地の確認 | 解体・大工 | ここで追加が出ると全部が動く |
日数は物件の規模と工事範囲で変わるので、決め打ちの数字は出しません。ひとつだけ目安を挙げるなら、内装をひと通りやり直す物件で、弊社は1ヶ月以上をみています。間取りを変える、耐震や断熱まで手を入れる場合はさらに要ります。
大事なのは日数そのものより、⑥から①へ向かって組むことです。⑥の解体で追加が出ると、その下の全部が動きます。だからこそ「追加が出たときにどうするか」を先に決めておく意味があります。
4. 進み具合は、写真で受け取る
現場に毎回行くのは無理です。だからこそ、写真で受け取る形を先に決めておいてください。
とくに大事なのは、完成すると見えなくなる部分です。下地、配管、断熱材。ここは引き渡し後に「本当に直したのか」と聞かれても、写真がなければ答えようがありません。
決めておくのは3点です。
- どの単位で送ってもらうか(工種ごと/日ごと/節目ごと)
- どこを撮ってもらうか(見えなくなる部分は必須)
- どこに送ってもらうか(LINEかメールか、担当者宛か会社宛か)
5. 引き渡し後の窓口を、契約前に決めておく
工事が終わっても、案件は終わりません。買主が入居してから「ここが気になる」という連絡が来ることがあります。
そのとき誰が受けるのかを、契約の前に決めておいてください。契約書で確認すべき項目は原状回復業者との契約書チェックリスト|10の確認項目にまとめています。買取再販でも見るべき項目はほぼ同じです。
あわせて、施工の記録をどう残すかも決めておきます。使った材料、施工した日、担当した業者。国土交通省の「安心R住宅」の考え方でも、既存住宅は点検記録や工事の履歴を残すことが前提になっています。記録があれば、次に売るときの材料にもなります。
次の案件でも同じ結果を出すために
ここまでの5つを1件ごとにやっていると、担当者の手間が増えるだけです。2件目からは型にしてください。
発注の型を1枚にする
見積の回答日、追加の連絡基準、承認する人、写真の単位、引き渡し後の窓口。この5つを書いた紙を、物件ごとにコピーして使います。業者に渡す資料もこれ1枚で済みます。
業者を固定すると、決めごとが減る
案件ごとに業者が変わると、この5つを毎回説明し直すことになります。同じ会社に続けて頼めば、2件目からは「いつもの通りで」で済みます。
工期が読めるようになるのは、業者の腕が上がるからではありません。お互いの段取りが揃うからです。買取再販のように販売日が決まっている工事ほど、ここの差が効いてきます。
LinKの場合
株式会社LinKは、不動産会社の「外部工事部」として、買い取った中古住宅の工事を、現地調査からお見積り、工事中の写真報告、完工までまるごとお引き受けしています。賃貸の原状回復やお住まいのリフォームも承っています。
この記事で書いた5つについて、弊社は次の3つをお約束しています。
- 見積は、最短その日に出す。 現地でお出しできるものは当日、大きな工事も原則3日以内に。いつお出しできるかは、現地で必ず先にお伝えします
- 金額は、あとから増やさない。 お出しした金額で仕上げます。工事の範囲が変わるときだけ、着手する前に金額をお伝えし、ご承認をいただいてから進めます
- 工事は、写真で残す。 進み具合も、完成すると見えなくなる下地や配管も、写真でお渡しします
2023年6月の創業から、累計ご依頼は594件(お見積りのご相談を含む)。協力会社は60社以上あり、内装・設備・電気・クリーニングまで窓口ひとつでお受けできます。東京・千葉・神奈川・埼玉で施工しています。本社は東京都江戸川区です。
よくある質問
Q1: 見積りは現地調査からどれくらいで出ますか?
内装だけなど範囲がはっきりしている工事は、現地でその日のうちに概算をお出しできることがあります。給排水や電気が絡む工事、複数の工種が重なる工事は、協力会社の確認が入るため原則3日以内です。いずれの場合も、現地で「いつ出せるか」を先にお伝えします。ここが読めないと、そちらの販売予定日が組めないためです。
Q2: 材料支給でも施工してもらえますか?
対応しています。買取再販では、仕様を揃えるために建材をまとめて仕入れている会社さまもあります。その場合は、支給品の受け取り日と保管場所を先に決めさせてください。現場に材料が届いていないと、その日の職人が動けなくなるためです。
Q3: 工事の申請手続きもお願いできますか?
マンションの管理組合への工事申請は、代行しています。申請から承認までの日数は管理組合によって幅があるため、工程を組む前に申請の要否を確認するのがおすすめです。ここを後回しにすると、着工日が読めなくなります。区分マンションの工事では、この確認が工期の前提になります。
まとめ:販売予定日を守るのは、着工前の5つの決めごと
買取再販の工事で販売予定日を守るために、発注する側が着工前に決めておくことを整理します。
- 見積の回答日を最初に確認する —— 金額より先に「いつ出せるか」
- 追加費用が出る条件を文章にしておく —— 連絡の基準、承認する人、承認までの時間
- 工程は引き渡しから逆算する —— 着工から足すのではなく、引き渡し日から引く
- 進み具合は写真で受け取る —— 見えなくなる部分は必須
- 引き渡し後の窓口を契約前に決める —— 買主からの連絡を誰が受けるか
どれも工事が始まる前に決められることばかりです。そして一度型にしてしまえば、2件目からは同じ手間はかかりません。
工期は、祈って守るものではなく、段取りで守るものです。