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業界知識

退去後の汚れ・傷はどう直す? よくある10パターンの対処法・費用・負担区分を一挙解説

吉野 博

株式会社LinK 代表 / 業界歴約11年 / 原状回復・リフォーム専門

退去立会いをしていると、「これって直せるの? いくらかかるの?」という疑問を持つオーナーさんや管理会社の担当者さんは多いはずです。

結論から言うと、すべての汚れ・傷に「直し方がある」わけではありませんし、直し方によって費用も仕上がりも変わります。また、「業者に頼まなくていいレベル」と「プロでないと難しいレベル」の線引きを知っておくと、無駄なコストを減らせます。

この記事では、退去現場でよく見かける汚れ・傷10パターンについて、対処法・費用目安・借主/オーナーの負担区分・プロへの依頼基準を整理します。11年この業界で積み上げてきた現場の知見をもとに書いています。

パターン1: タバコのヤニ汚れ(クロス)

状況と対処法

壁・天井のクロスが全体的に黄〜茶色に変色し、独特の臭いが残る。角や換気口周辺に汚れが集中しやすいのが特徴です。

軽度(表面的な変色のみ): 専用の洗浄剤でクリーニング。臭いが薄い場合は洗浄 + 脱臭処理で改善できるケースがあります。

中〜重度(クロス全体が変色・臭いが強い): クロスの全面張替えが必要。ヤニが下地まで染み込んでいる場合はシーラー(下地処理剤)を塗布してから張替えます。

費用目安と負担区分

対処法 費用目安(1K〜1LDK)
洗浄 + 脱臭処理 2〜5万円
クロス全面張替え(下地処理あり) 10〜18万円

費用負担: タバコのヤニ汚れは借主負担が基本です。喫煙可物件であっても、国土交通省のガイドラインではヤニ汚れは借主負担とされています。

自分でできるか: 洗浄剤で試すことはできますが、臭いが染み込んでいる場合は市販品では限界があります。張替えが必要なレベルは業者に依頼してください。

パターン2: キッチンの油汚れ

状況と対処法

換気扇フード・ガスコンロ周辺・キッチンパネルに茶〜黒色の油汚れが固着。長期入居の物件で特に多いパターンです。

軽〜中度: 業務用の強アルカリ洗浄剤を使った特殊クリーニング。換気扇は分解洗浄が基本。

重度(焦げ付き・腐食が進んでいる場合): キッチンパネルの交換や換気扇ユニットごとの交換が必要。

費用目安と負担区分

対処法 費用目安
レンジフード(換気扇)クリーニング 1.5〜3万円
キッチン全体特殊洗浄 3〜6万円
キッチンパネル交換 5〜15万円(範囲による)

費用負担: 通常使用の汚れは経年劣化としてオーナー負担の場合があります。ただし清掃を怠った結果として固着した汚れは借主負担が基本です。

自分でできるか: 軽度の油汚れはドラッグストアの強力洗剤でケア可能。換気扇の分解洗浄や固着した汚れは業者依頼を推奨します。

パターン3: 浴室のカビ

状況と対処法

タイルの目地・コーキング(防水材)・天井などに黒カビが発生。軽度では表面に点在し、重度では目地全体が黒化します。

軽度: カビ取り剤を使った専門クリーニング。中度: カビ取り施工 + コーキングの打替え。重度: コーキング全打替え + 場合によってはタイル補修。

費用目安と負担区分

対処法 費用目安
浴室クリーニング 1.5〜2.5万円
コーキング打替え(浴室全体) 2〜4万円
カビ取り + コーキング打替えセット 3〜6万円

費用負担: 換気を怠った結果のカビは借主負担。適切に換気していたが構造上カビやすい物件はオーナー負担の可能性あり。

自分でできるか: 表面のカビは市販カビ取り剤 + ブラシで対処可能。コーキングの打替えはDIYも可能ですが、防水性の仕上がりを考えると業者依頼を推奨します。

パターン4: フローリングの凹み

状況と対処法

家具の重さによる凹み、物を落とした際の打痕。単発の小さな凹みから、家具設置箇所全体が凹んでいるケースまであります。

小さな凹み(直径2cm以下程度): フローリングリペア(部分補修)。専用パテとコーティングで目立たなくします。広範囲の凹みや深い傷: 部分張替えまたは全面張替え。

費用目安と負担区分

対処法 費用目安
リペア(1箇所) 5,000〜15,000円
部分張替え(1〜2畳分) 2〜5万円
フローリング全面張替え(1K) 15〜30万円

費用負担: 家具の設置による凹みは経年劣化とみなされ、オーナー負担となるケースが多い。物を落とした打痕は借主負担が基本です。

自分でできるか: 市販のフローリング補修クレヨン・パテで目立たなくすることは可能。ただし仕上がりに差が出ます。広範囲・深い傷は業者依頼を推奨します。

パターン5: ペットの爪痕(床・壁)

状況と対処法

フローリングや建具(ドア下部)への引っかき傷が多数。ペット可物件で集中するパターンで、臭い(ペット臭)が伴うことも多いです。

フローリングの爪痕: 浅い傷はリペア。深い傷・範囲が広い場合は部分〜全面張替え。壁紙の爪痕: クロスの部分または全面張替え。臭い: 段階的に消臭施工〜下地交換。

費用目安と負担区分

対処法 費用目安
フローリング部分張替え(ペット傷) 5〜15万円
ドア下部リペア 1〜3万円
臭い除去(脱臭処理) 2〜5万円

費用負担: ペット飼育による傷・臭いは借主負担が原則です。ペット可物件でも同様。ただし、クロスの経年劣化分は控除されます(6年で残存価値1円)。

自分でできるか: 軽微な傷はリペアクレヨンで対処可能。ペット特有の臭いは市販品では除去が難しく、専門業者の脱臭処理が有効です。

パターン6: 壁の画鋲穴・ネジ穴

状況と対処法

カレンダーや写真を掛けていた画鋲穴、カーテンレール等のネジ穴。壁に多数の穴が開いているケースです。

画鋲穴(小さな穴): 通常損耗と判断されるケースが多い。補修が必要な場合はパテで穴埋め後、クロスの部分補修。大きなネジ穴・釘穴: パテ補修 + 必要に応じてクロス部分張替え。下地(石膏ボード)が凹んでいる場合: 下地補修後にクロス張替え。

費用目安と負担区分

対処法 費用目安
画鋲穴(複数)のパテ補修 5,000〜15,000円
大きな穴のパテ + クロス補修 15,000〜40,000円

費用負担: 国土交通省のガイドラインでは、画鋲穴は通常損耗として借主の負担にならないことが多いです。ただし、大量の穴や大きなネジ穴は借主負担となる場合があります。

自分でできるか: ホームセンターの壁補修パテで対応可能。色・テクスチャーを合わせるのは難しいため、目立つ場所は業者依頼を推奨します。

パターン7: ドア・建具の傷

状況と対処法

ドア表面の引っかき傷、ドア枠の欠け、戸棚の扉のはがれ、ふすまの破れ等。

軽度の傷: リペア(補修)で目立たなくする。塗膜・化粧シートのはがれ: シート貼り直しまたは塗装補修。深い傷・大きな欠け: ドアまたは建具の部材交換。

対処法 費用目安
ドアリペア(1箇所) 1〜3万円
化粧シート補修 2〜5万円
ドア交換(1枚) 5〜15万円

費用負担: 通常使用の軽微な傷は経年劣化。故意・過失による損傷は借主負担です。

パターン8: 窓際の結露跡

状況と対処法

窓下のクロスが水分でふくらみ・黄変・黒ずみ。カビが発生しているケースも多い。サッシ周辺のコーキングにカビが繁殖していることもあります。

軽度: クロスの部分張替え。重度(下地まで湿気が浸透): 石膏ボードの乾燥・場合によっては交換 + クロス張替え。

対処法 費用目安
クロス部分張替え(窓下1〜2m分) 1〜3万円
下地処理 + クロス張替え 3〜8万円

費用負担: 換気不足による結露は借主負担が基本。ただし建物の断熱性能が低いことによる結露はオーナー側の設備問題として争いになりやすいです。

パターン9: トイレの水垢・黄ばみ

状況と対処法

便器内の黄〜茶色の水垢、尿石(にょうせき)の固着。タンク・床・壁への飛び汚れ。長期入居後に多いパターンです。

水垢・黄ばみ: 酸性洗浄剤での特殊クリーニング。強固な尿石は研磨処理が必要。それでも取れない固着した尿石: 便器交換を検討。

対処法 費用目安
トイレクリーニング(特殊洗浄) 1〜2万円
尿石除去(研磨含む) 2〜4万円
便器交換(工賃含む) 5〜15万円

費用負担: 清掃を怠った結果の尿石・水垢は借主負担が基本です。

自分でできるか: 市販の酸性洗剤で軽度の水垢は対処可能。頑固な尿石は市販品では限界があり、業者の特殊洗浄が有効です。

パターン10: 玄関タイルの欠け・割れ

状況と対処法

玄関の床タイルに欠け・ひび割れ。物を落とした衝撃や経年劣化で起きます。

小さな欠け(1〜2枚): タイルリペアまたは欠けた箇所のみ交換。ただし同じタイルが入手できるかどうかが重要。複数枚の割れ・広範囲の損傷: 玄関タイル全面の張替え。

対処法 費用目安
タイルリペア(1〜2箇所) 5,000〜20,000円
タイル部分交換(数枚) 2〜5万円
タイル全面張替え(玄関1カ所) 5〜15万円

費用負担: 経年劣化によるひびはオーナー負担。物を落とした等の過失による欠けは借主負担です。

「自分で直せるレベル」と「業者に頼むべきレベル」の判断基準

自分で対処できる可能性が高いケース

  • 画鋲穴の補修(パテ)
  • 軽微な傷の補修マーカー・クレヨン使用
  • 表面の汚れの洗浄(酸性洗剤・カビ取り剤)
  • 軽度の水垢クリーニング

業者に依頼すべきケース

  • 下地まで傷んでいる(クロス裏の石膏ボード・フローリング下地)
  • 臭いが染み込んでいる(タバコ・ペット)
  • 広範囲の張替えが必要
  • 設備の交換・取替えが必要
  • 原因が特定できない損傷(漏水・構造的な問題の可能性)
  • 防水性が求められる箇所(浴室のコーキング等)

迷った場合は、写真を撮って専門業者に相談するのが一番確実です。LinKでも現場の状況を確認した上で、最適な対処法をご提案しています。

よくある質問

Q. 複数の損傷がある場合、まとめて直した方が安くなりますか?

A. まとめて発注した方が安くなるケースがほとんどです。職人の出張費・準備費が1回分で済むため、個別に発注する場合と比べて1.5〜2倍のコスト差が出ることがあります。特にクロス張替え + CF張替え + クリーニングのように複数工種を同時施工する場合、工期も短縮できます。

Q. リペア(補修)と張替え、どちらを選ぶべきですか?

A. 判断基準は「損傷の範囲」と「次の入居者への印象」です。1〜2箇所の小さな傷であればリペアで十分。広範囲に傷が散在している場合や、目立つ位置の損傷は張替えの方が仕上がりが良く、長期的にはコストパフォーマンスも高いです。費用は一般的にリペアが5,000〜15,000円/箇所、張替えはm²単位で800〜4,500円です。

Q. 入居者にDIYで直してもらうことは可能ですか?

A. 退去時に入居者がDIYで補修するケースはありますが、仕上がりが不十分な場合は結局やり直しが必要になります。特にクロスの張替えやコーキングの打替えは、プロの仕上がりとDIYでは明確な差が出ます。入居者に「自分で直すから費用を免除してほしい」と言われた場合は、仕上がりの基準を事前に明確にしておくことが重要です。

退去後の現場で「これは直せるの?いくらかかるの?」と迷ったら、写真を撮ってお送りください。最適な対処法と費用をご案内します。

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